息子の部屋

 

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2002/3/1 鑑賞。

監督:ナンニ・モレッティ
出演:
ジョバンニ:ナンニ・モレッティ
パオラ:ラウラ・モランテ
イレーネ:ジャスミン・トリンカ
アンドレア:ジュゼッペ:サンフェリーチェ

 

2001年、カンヌでパルムド−ルを受賞した作品。

親よりも先に死ぬことは、
人間にとって、最大の罪と言えるかもしれない。
この作品は、そんな息子を失った家族の
だんだんとバラバラになっていく姿、そして、
なんとかその悲しみから立ち直ろうとするところに
息子のガールフレンドが現れ、
そのガールフレンドが見せた写真をきっかけに
息子の死を受け入れる家族の姿を現している作品となっている。

いろいろなものを創っていく上で、
テーマとして扱うのに最も難しいのは、
やはり「人の死」であろう。
そんな、難しい、しかし、いつ、どこで起こってもおかしくないような、
そんなテーマを、非常に上手く扱っている。
息子に先立たれ、家族が徐々にバラバラになっていく様子。
それぞれの心理描写がすごく微妙なのに、
よく伝わってきた。
あのとき、往診を断っていれば・・・
後悔先に立たず、とはよくいうが、
この気持ち、痛いぐらいによくわかるものである。

立ち直ろう、ともがきあがいているところにあらわれたアンドレアのガールフレンド。
彼女が見せた写真の中に、
家族が知らなかった彼の成長を見る。
そして、今まで認めたくなかった息子の死を
少しずつ、受け入れ始める。

実は、本当にどこにでも転がってそうなテーマとストーリーである。
しかし、それが、日常に近いことだからこそ、
表現するのは難しいであろう。
それを、ここまで感動的に映像化できたことが、
実にすばらしい、
パルムドールも当然かな、と思う。
確かに、かなり難解ではあるのだが。

最後がすごくあっけなかった。
もう少し、なにか、あるのかな、と思っていたら、
もう、これで終わりなの?と思ってしまうような。
ところが、実際、これより先を描いてしまうと、
面白みがなくなってしまうような気もする。
結局なんだったんだ?と思わせ、その後は自分で考えてください、ということだろう。
答えではなく、ヒントを与えてくれた、というカンジである。

しかし、なんとも、考えさせられる映画である。
最近、日本では、家族というものが全く成り立っていないようである。
この映画の中で描かれているような
休日は一緒に過ごすだとか、親子でジョギングをするだとか。
こういったことが、当たり前のように描かれているこの物語の前半部分、
これが、家族のあるべき姿のはずなのに、
最近の日本国内では、めっきりこういうのは減ってしまった。
個人の時間を大切にする、これが、この映画の中では
「巣立ち」の一つとして描かれている。
息子が、自分の部屋で親の見たことのない顔を親に紹介していないガールフレンドに見せている所。
しかし、現在の日本ではその「巣立ち」までの時間が十分に過ごされていないように思える。
この映画の最も訴えていたのは、
その、家族のあり方なのかもしれない。


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First update: March 1, 2002.